言葉にしてみる日記

日頃考えていることや感じたことを言語化するために書いているブログです。

大学職員の職能開発(SD)に関する政府・文部科学省の動向

大学職員に求められる役割はどのように変化してきたか、そして、大学職員の職能開発(SD)として一体何が求められるのかということについて、改めて調べてみることにしました。

以下、政府や文部科学省の資料から、大学職員の職能開発(SD)に関すると思われるものを、年代順に抜粋していきます。

 

●大学審議会「大学運営の円滑化について(答申)」平成7年9月18日

  大学改革を推進し、教育研究を活性化する上では、教員組織と事務組織は車の両輪であり、両者の良きパートナーシップの確立が必要である。また、大学運営の複雑化、専門的事項の増加などに伴い、事務組織の果たす役割が一層重要になってきている。
 事務組織においては、大学に関する諸制度や予算を踏まえて、大学改革の推進等について学長、学部長等を補佐し、改革の方向に沿った教育研究活動の支援を積極的に行っていくことが重要である。

 

●「科学技術基本計画」平成8年7月2日閣議決定

  国立大学等及び国立試験研究機関において、実情に応じた研究支援部門の組織化促進及び研究支援業務の意義・役割を踏まえた処遇の確保を図りつつ、技術職員等を計画的に確保する。また、事務的業務の簡素化を進めるとともに、研修等を通じ、研究開発を円滑に進めるための事務系職員の資質の向上を図る

 

●大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)-競争的環境の中で個性が輝く大学-」平成10月26日

 大学が一体的・機能的に運営され,また,教員が教育研究に専念できる体制を作るため,学内の機能分担を明確にした上で,学内において意見聴取や説明を十分行い,それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。
 このため,学内の意思決定に関する基本的な枠組みとして,大学の運営と教育研究に関する機能分担と連携協力の関係を明らかにするという観点から,学長を中心とする大学執行部の機能,全学と学部の各機関の機能,執行機関と審議機関との分担と連携の関係,審議機関の運営の基本,事務組織と教員組織の連携の在り方等を明確化する必要がある。
 大学の事務組織については,教学組織との機能分担の明確化と連携協力の関係の確立が求められる。このため,学長,学部長等の行う大学運営業務についての事務組織による支援体制を整備すること,国際交流や大学入試等の専門業務については一定の専門化された機能を事務組織にゆだねることが適当である。また,大学運営の複雑化,専門化に対応するために,全学的な観点からの適正な職員配置,学部や大学の枠を越えた人事交流,民間企業での研修の機会の充実など,職員の研修や処遇等について改善する必要がある。

 

中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像(答申)」平成17年1月28日

  高等教育の質の保証を考える上では,教員個々人の教育・研究能力の向上や事務職員・技術職員等を含めた管理運営や教育・研究支援の充実を図ることも極めて重要である。評価とファカルティ・ディベロップメント(FD)やスタッフ・ディベロップメント(SD)等の自主的な取組との連携方策等も今後の重要な課題である。

用語解説 スタッフ・ディベロップメント (p.22)
事務職員や技術職員など教職員全員を対象とした,管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取組を指す。 

 

●国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議「新しい『国立大学法人』像について」平成14年3月26日

 ・事務組織は、教員と連携協力して企画立案に参画し、学長以下の役員等を直接支えるなど、専門職能集団としての機能を発揮
 法人化を契機に、事務職員等が教員と連携協力して大学運営の企画立案に積極的に参画していくことが期待されるが、各学長の判断により、こうした事務職員等のうち、大学運営に高い見識を有する者を役員に積極的に登用することも考えられる。
 事務組織が、法令に基づく行政事務処理や教員の教育研究活動の支援業務を中心とする機能にとどまらず、また、日常の大学運営事務に加えて、教員と連携協力しつつ大学運営の企画立案等に積極的に参画し、学長以下の役員等を直接支えるなど、大学運営の専門職能集団としての機能を発揮することが可能となるよう、組織編制、職員採用・養成方法等を大幅に見直す。  

 

中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」平成20年12月24日

 ①職能開発の重要性
(ア) 大学職員は,大学の管理運営に携わる,また,教員の教育研究活動を支援するなど,重要な役割を担っている。職員の学内での位置付け,職員と教員の関係については,国公私立それぞれに状況が違うが,大学経営をめぐる課題が高度化・複雑化する中,職員の職能開発(スタッフ・ディベロップメント,SD)はますます重要となってきている。大学職員に関しては,教員一人当たりの職員数が低下していく傾向にある中(図表3-7~3-8),個々の大学職員の質を高める必要性が一層大きくなっている。職員の間でも,大学院での学習を含め,自己啓発の重要性への意識が高まり,学会や職能団体の発足など,職能開発の推進に向けた機運が醸成されつつある(図表3-9)。
(イ) 高度化・複雑化する課題に対応していく職員として一般的に求められる資質・能力には,例えば,コミュニケーション能力,戦略的な企画能力やマネジメント能力,複数の業務領域での知見(総務,財務,人事,企画,教務,研究,社会連携,生涯学習など),大学問題に関する基礎的な知識・理解などが挙げられる。加えて,新たな職員業務として需要が生じてきているものとしては,インストラクショナル・デザイナーといった教育方法の改革の実践を支える人材が挙げられる。また,研究コーディネーター,学生生活支援ソーシャルワーカー,大学の諸活動に関する調査データを収集・分析し,経営を支援する職員といった多様な職種が考えられる。国際交流を重視する大学であれば,留学生受入れ等に関する専門性のある職員も必要となろう。これらの業務には,学術的な経歴や素養が求められるものもあり,教員と職員という従来の区分にとらわれない組織体制の在り方を検討していくことも重要である。
(ウ) さらに,財務や教務などの伝統的な業務領域においても,期待される内容・水準は大きく変化しつつある。それぞれの大学において,新旧様々な業務について,職員に求められる能力とは何かを分析し,明確にしていくことが求められる。

②職員の職能開発の実質化と充実
(ア) 専門性を備えた大学職員や,管理運営に携わる上級職員を養成するには,各大学が学内外におけるSDの場や機会の充実に努めることが必要である。職員に求められる業務の高度化・複雑化に伴い,大学院等で専門的教育を受けた職員が相当程度いることが,職員と教員とが協働して実りある大学改革を実行する上で必要条件になってくる(図表3-10)。
(イ) なお,教職員の協働関係の確立という観点からは,FDやSDの場や機会を峻別する必要は無く,目的に応じて柔軟な取組をしていくことが望まれる。

【スタッフ・ディベロップメント(SD)】(p38,41,44等)
事務職員や技術職員など職員を対象とした,管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取組を指す。「スタッフ」に教員を含み,FDを包含する意味としてSDを用いる場合(イギリスの例)もあるが,ここでは,FDと区別し,職員の職能開発の活動に限定してSDの語を用いている。 

 

中央教育審議会大学分科会「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)平成26年2月12日

 (事務職員の高度化による教職協働の実現)
◯ 事務職員については,従前は,大学間の人事交流が活発であった国立大学も含めて,同一大学内での勤務が続き,様々な職務環境において新たな知識やノウハウを学ぶ機会が少なくなる傾向にあると指摘されている。また,2年程度の短期間で様々な部署を異動することが多いため,専門性の高いスタッフを養成していくことが困難との意見もある。
◯ 今後,各大学による一層の改革が求められる中,事務職員が教員と対等な立場での「教職協働」によって大学運営に参画することが重要であり,企画力・コミュニケーション力・語学力の向上,人事評価に応じた処遇,キャリアパスの構築等についてより組織的・計画的に実行していくことが求められる。例えば,国内外の他大学,大学団体,行政機関,独立行政法人,企業等での勤務経験を通じて幅広い視野を育成することや,社会人学生として大学院等で専門性を向上させることを積極的に推進すべきである。
◯ また,前述のURAやアドミッション・オフィサー,カリキュラム・コーディネーターをはじめとする,高度の専門性を有する職種や,事務職員等の経営参画能力を向上させるため,大学が組織的な研修・研究(スタッフ・ディベロップメント(SD))を実施することも重要である。

 
というわけで、つらつらと抜粋してきましたが、大学職員の職能開発(SD)については、おおむね次のようにまとめられるかと思います。

  • 大学改革の推進や教育研究の質的向上を図るうえで、大学の管理運営や教育研究の支援に携わる者として、大学職員の職能開発の必要性が認識されてきた。
  • 大学の管理運営について、当初は「学長や役員の意思決定を補佐する」という補助的な役割が期待されていたが、最近では、「経営に参画する」というようにより直接的に関わることが求められるようになった。
  • 当初は「教育組織/事務組織」、「教育職員/事務職員」という区分で両者の役割分担や連携の必要性に関する記述であったものが、最近では、二つの区分に分けられない専門的役割を果たす多様なスタッフの必要性に関する記述が目立つようになった。

個人的には、大学職員のあり方については、理想と現実のギャップがかなり大きいと感じています。何より、大学職員自身が大学職員に求められる役割の高度化・多様化をどのように感じているかということが問題です。

法人化後に国立大学に事務職員として採用された私は、大学改革を迅速かつ着実に実行していくために、国の政策や産業界の動向にアンテナを向けることや効率性や有効性を高めるために既存の業務の方法を見直すことにやりがいを感じています。

しかし、数年働いているうちに、むしろそのような職員は組織の中では少数派なのではないかと考えるようになりました。

大学の役員や執行部は、大学改革のために最新の情報や新しいアイデアを求めているのですが、現場の大学職員がそれに対応できていないという場面も多々あります。

この点については、愛知教育大学の職員である中村章二さんが自らの経験を踏まえた説得力のある論考を発表されています。

中村章二(2013)「信頼される大学職員に向けて-教育研究機関である大学の総務系業務-」名古屋高等教育研究、第13号、pp.53-70

教職員や学生に信頼される大学職員になりたいと思いますし、また、同じような「志」をもつ職員をどんどん増やしていきたいと思います。