言葉にしてみる日記

日頃考えていることや感じたことを言語化するために書いているブログです。

「学習する組織」の特徴

 近年、技術革新やグローバル化規制緩和といった組織を取り巻く環境が大きく変化するなかで、従来のトップダウン型の組織変革手法が行き詰まりを見せるとともに、一部の研究者や実務家の間で「学習する組織」が注目されています。
 ここでは、経営学の研究者や経営コンサルタントの論考を適宜引用しながら、「学習する組織」の特徴をまとめてみます。

 白石弘幸氏は、センゲやガービン、ダフトといった「学習する組織」論の代表的な人物を紹介した上で「学習する組織」を次のように定義しています。 

学習する組織とは、組織メンバーを学習の主体として尊重し、すべてのメンバーが知識や技能の取得に動機付けられている組織である

・白石弘幸(2009)「組織学習と学習する組織」『金沢大学経済論集』第29巻第2号, pp.233-261.

 学習する組織における組織と個人との関係について、株式会社ヒューマンバリューの高間邦男氏は、従来の「忠誠心」という言葉に変わるものとして「エンゲージメント」という言葉を用いて説明しています。それは、働く個人が組織に対して期待し、依存するだけでなく、組織と個人が一体となって互いの成長に貢献し合う関係を指します。エンゲージメントの強さは、「自分が組織の活動を通して組織や社会に役立っているという『貢献感』、組織が自分らしい場所だと感じる『適合感』、お互いに共感できる人が組織にいるという『仲間意識』」の3つの要因で構成されます。

・高間邦男(2005)「学習という側面から見た企業DNA」リクルートワークス研究所『Works』No.72.

 人々のエンゲージメントを高めるにはどうしたらよいでしょうか。株式会社ヒューマンバリューの兼清俊光氏は、エンゲージメントを高めるためには、構成員自らがつながりを見出す場と機会と支援を提供することが重要であるとし、組織における課題解決へのアプローチの手法として従来の「ギャップ・アプローチ」に代わるものとして「ポジティブ・アプローチ」が必要だとしています。

・兼清俊光(2010)「どうしたら情熱と主体性、創造性を発揮してもらえるか」、商工中金経済研究所『商工ジャーナル』2010年5月号.

 「ギャップ・アプローチ」は、あるべき基準が外側から条件として与えられているときに行われるものであり、現在の状態とあるべき状態のギャップを問題とし、その問題が起きている原因を分析的に検討し、根本となる原因を課題として特定し、その解決策を選択し、行動に移すという手順で行われます。これに対して、「ポジティブ・アプローチ」は、ありたい状態を構成員の内側から生み出すことによって行われるものであり、具体的には、メンバーの強みや価値を発見し、それをもって「どうありたいか」、「どうなり得るか」を考え、共有した目的を実現するためのプランを創造し、実行するというアプローチです。

 この2つのアプローチについて、高間邦男氏は、「今日的な問題はあるべき姿が誰にも分からない」ということと、「外側から基準が与えられる『せねばならない』というアプローチが、メンバーに受身的な強いられ感を与え、メンバーの元気を引き出せない」ことを理由として、ポジティブ・アプローチのほうがギャップ・アプローチよりも効果的であるとしています。

 また、兼清俊光氏もポジティブ・アプローチの効果について

このみんなで考えたこの新しい一歩は、経営者の目から見たら稚拙であったり、当たり前のことのように思えるかもしれない。しかし彼らが自ら踏み出した一歩は必ず前に進む。前に進むと、人は経験から学ぶので、次なる一歩のレベルは上がってくる。指示や命令を待って動かないよりも、まずは情熱を持って主体的に動き出すことが大事であり、経験から学びながら創造性を発揮し、未来を創っていくのである。

と述べ、経営者や管理職がコントロールを手放す必要があるとしています。

 

以上のように「学習する組織」について整理してきましたが、私なりにその特徴をまとめると次のようになるかと思います。

  • 「学習する組織」という表現をしているが、学習の主体は組織そのものではなく、組織を構成する個人やグループである。
  • 「学習する組織」は、従来のトップダウン型組織とは対照的に、それぞれ個性を持った個人の、組織や組織を構成する他者に対する「エンゲージメント」に基づいて成立し、組織を構成する個人は、組織の目的の達成のために水平的につながり、主体的に活動を進める。


従来のトップダウン型組織の限界が見えてきて、「学習する組織」が必要とされることはよく分かります。知識基盤社会の到来によって、これまでのように「言われたとおりのことを素早くかつ確実に処理する人」ではなく、「答えのない問題に対して新たなアイデアを生み出し、その解決をめざす人」が求められています。このように、変化の多い時代にあっては、これまでの慣習にとらわれない新たな知を生み出すことが個人にも組織にも求められているということでしょう。