言葉にしてみる日記

日頃考えていることや感じたことを言語化するために書いているブログです。

科研費の応募資格について【未完】

私はとある国立大学の研究支援担当の部署で科研費の申請・報告業務を担当しています。

最近、「客員教授」や「名誉教授」、「プロジェクトで雇用された特任研究員」の方から、『私たちも科研費に応募したいのだけど、ダメなの?』と問い合わせを受けることが増えてきました。

これまでケース・バイ・ケースで担当理事と相談しつつ、その可否を判断していたのですが、そろそろ明確な基準を定めなければならないと思っています。

そこで、「公募要領」(「平成27年度科学研究費助成事業公募要領(特別推進研究、基盤研究(S・A・B・C)挑戦的萌芽研究、若手研究(A・B))」(平成26年9月1日独立行政法人日本学術振興会))等の資料を参考にしながら、「科研費の応募資格」について整理していきたいと考えています。

なお、自分のために調べたことを記録したものという位置付けですので、読者の方の有益な情報になるかは自信がありません。予め御了承ください。

さて、「公募要領」のp.15に科研費の応募資格についての記載があり、次の①及び②を満たすことが必要となります。

① 応募時点において、所属する研究機関から、次のア、イ及びウの要件を満たす研究者であると認められ、e-Radに「科研費の応募資格有り」として研究者情報が登録されている研究者であること
<要件>
ア 研究機関に、当該研究機関の研究活動を行うことを職務に含む者として、所属する者(有給・無給、常勤・非常勤、フルタイム・パートタイムの別を問わない。また、研究活動そのものを主たる職務とすることを要しない。)であること
イ 当該研究機関の研究活動に実際に従事していること(研究の補助のみに従事している場合は除く。)
ウ 大学院生等の学生でないこと(ただし、所属する研究機関において研究活動を行うことを本務とする職に就いている者(例:大学教員や企業等の研究者など)で、学生の身分も有する場合を除く。)

② 科研費やそれ以外の競争的資金で、不正使用、不正受給又は不正行為を行ったとして、平成27年度に、「その交付の対象としないこと」とされていないこと

要件「ア」にあるように、有給か無給か、常勤か非常勤か、フルタイムかパートタイムかといった区分は、原則として応募資格の判断基準とならないことがわかります。

重要なのは、その人が、学内規則や雇用契約書等において「当該研究機関の研究活動を行うことを職務に含む者」であることが確認できるかどうかということです。

最近では、リサーチ・アドミニストレーター(URA)やインストラクショナル・デザイナー、ファカルティ・ディベロッパー、コーディネーターなど様々な専門スキルを有して雇用された人材がいます。事務系職員と同じオフィスで働いていても、実際の雇用契約書上において「○○○○に関する調査研究を行う」などの規定があり、実際に共同研究者として研究活動に従事している場合も考えられます。

「研究活動そのものを主たる職務とすることを要しない」という書きぶりであることから、担当者は注意が必要ですね。

要件「イ」の「研究の補助のみに従事している場合は除く」というかっこ書きがあることから、研究の補助のみに従事する「研究補助員」は、応募することはできません

要件「ウ」の定めにより、日本学術振興会特別研究員(DC)や外国人特別研究員、大学院生や学生は、研究活動を行うことを職務として行うことが認められている場合であっても応募することができませんのでご注意ください。


これまで研究者等の応募資格に関する定めを見てきましたが、これらと対になるものとして「公募要領」のp.64には、「研究機関が満たさなければならない要件」が定められています。

<要件>
科研費が交付された場合に、その研究活動を、当該研究機関の活動として行わせること
科研費が交付された場合に、機関として科研費の管理を行うこと

ひとつめの「・」は、裏を返せば、研究機関の判断で、その者の研究活動を当該研究機関の活動として行わせることが適切ではないとした場合には、研究機関として応募を認めないことを可能とする規定です。

「その研究活動を、当該研究機関の活動として行わせること」というのが少しわかりづらいのですが、例えば、研究費を適正に使用し、また、研究不正や研究費の不正使用を防止し、万が一、不正が発覚した場合には調査・報告を行う等、研究機関がその研究者等の研究活動について、文部科学省独立行政法人日本学術振興会に対して責任を負うことを指しているものと思われます。

客員教授」や「名誉教授」、「プロジェクトで雇用された特任研究員」といった方に、科研費の応募資格を与えるかどうかの判断は、この規定をどう当てはめるかによりなされるものと思われます。

なお、「特定のプロジェクトで雇用された者」の取扱いについては、科研費により雇用されている者(科研費被雇用者)の科研費応募資格についての判断基準(「公募要領」p.15-16)が参考になります。

  科研費により雇用されている者(以下、「科研費被雇用者」という。)は、通常、雇用契約等において雇用元の科研費の業務(以下、「雇用元の業務」とい う。)に専念する必要があります。このため、雇用元の業務に充てるべき勤務時間を前提として自ら科研費に応募することは認められません。
 ただし、雇用元の業務以外の時間を明確にし、かつ、その時間をもって自ら主体的に科研費の研究を行おうとする場合には、次の点が研究機関において確認されていれば科研費に応募することが可能です。

  • 科研費被雇用者が、雇用元の業務以外に自ら主体的に研究を行うことができる旨を雇用契約等で定められていること
  • 雇用元の業務と自ら主体的に行う研究に関する業務について、勤務時間やエフォートによって明確に区分されていること
  • 雇用元の業務以外の時間であって、自ら主体的に行おうとする研究に充てることができる時間が十分確保されていること

上記のようなさまざまな状況を踏まえて、各研究機関は、科研費の応募資格について基準を作成することになるのですが、おそらくは、その手続きを次のように進めていくことになるでしょう。

≪手順(暫定)≫

 

  1. 研究機関の研究活動従事者を、勤務形態や勤務条件に応じて、「客員教授」や「名誉教授」、「特任研究員(科研費被雇用者)」、「特任教員(プロジェクト)」等いくつかのカテゴリに分ける。
  2. それぞれのカテゴリに属する者について 、「科研費応募資格」の判断規準(「雇用契約書の規定」、「所属部局長の承認」、「研究環境」、「主たる業務との区分」、「エフォート」等)を設定し、それぞれの規準において、応募資格の付与を認める基準を設定する。

 

このような基準を作る際には、他大学の基準が参考になります。

このようにして基準ができると、研究活動に従事する者を雇用しようとするときに、科研費の応募資格を認めるか否かによって、募集時または採用時に科研費の応募資格について明記したり、研究環境の整備や勤務時間等を設定することができます。

いったん締結した雇用契約を変更するのは、やはり、例外的なやり方だと思いますし、学内の手続きも色々な困難が予想されます。

あらかじめ決められる点については決めておいた方がよいでしょうね。

なお、平成25年度まで日本学術振興会特別研究員(SPD・PD・RPD)については、特別研究員奨励費以外の科研費の研究種目に応募することはできませんでしたが、平成26年度より特別研究員としての研究課題が更に進展すると考えられる研究を実施するなどにおいてその制限が緩和されることになりました。これを受けて、「公募要領」p.64には研究機関向けに次のような注意書きがあります。

 平成26年度公募から、日本学術振興会特別研究員(SPD・PD・RPD)が研究従事機関として本会に届け出ている研究機関において下記の応募要件を満たす場合には、特別研究員奨励費以外の一部研究種目にも応募が可能となっています。(「重複制限一覧表」参照)応募の際には、特別研究員としての採用期間を超える形での応募を認めないといった運用を行わないようにしてください。

各研究機関の担当者は、特別研究員(SPD・PD・RPD)が不利益を被ることがないように気をつけないといけないですね。

 

ほとんど書き終えてしまったのですが、実は、この記事の書き始めたときには、もっと違うアプローチにしようと考えていました。

科研費の応募資格」について、なぜ研究機関の裁量が比較的大きいのだろうか、そもそも、この要件を定めた方はどのような議論を行って結論に至ったのかという疑問があり、過去の文部科学省での審議会等にその答えを求めようとしていたのです。

文部科学省の科学技術・学術審議会・学術分科会・研究費部会(第三期)にて科学研究費補助金制度の在り方についての見直しが検討され、審議の結果がまとめられています。

●「科学研究費補助金の在り方について(報告)(抜粋)」(平成16年12月10日科学技術・学術審議会・学術分科会研究費部会)

1.応募資格の見直し
 科研費(一部の研究種目を除く)の応募資格は、従来、指定された研究機関に「常勤の研究者(当該研究機関に常時勤務し研究を主たる職務とする者)として所属する者」としてきたが、研究者の勤務形態や職名の多様化に伴い、これを見直す必要が生じている。
 本部会においては、「研究者の自由な発想に基づく優れた独創的・先駆的研究を格段に発展させることを目指した研究資金であり、我が国の学術研究の振興そのものを目的としている」(平成15年5月27日 研究費部会報告)という科研費の目的・理念を前提としつつ、「職務の内容と研究との関係」、「研究機関への帰属度」等の側面から、今後の応募資格の在り方について検討を行った。
 その結果、より多様な勤務形態・職名等に対応し、優れた独創的・先駆的研究を広く対象とできるようにするため、今後の応募資格については、従来の機関指定制を維持しつつ、次の4つの要件を全て満たすこととすることが妥当であるとの結論を得た。

<研究者に係る要件>
a 指定された研究機関に、当該研究機関の研究活動を行うことを職務に含む者として、所属する者であること(有給・無給、常勤・非常勤、フルタイム・パートタイムの別を問わない。また、研究活動以外のものを主たる職務とする者も含む。)
b 当該研究機関の研究活動に実際に従事していること(研究の補助は除く。)

<研究機関に係る要件>
c 科研費が交付された場合に、その研究活動を、当該研究機関の活動として行わせること
d 科研費が交付された場合に、機関として補助金の管理を行うこと
 どの職員を前記の要件を満たす者として位置づけるかは、個々の職員の資質・研究能力を踏まえつつ、各研究機関の判断と責任において決定されるべきものである。基本的考え方として、この点は、従来の応募資格であった「常勤の研究者」の採用が各研究機関の裁量に委ねられていたことと何ら変わるものではない。

多様化してきた研究者等の職務形態に応じて、「職務の内容と研究との関係」、「研究機関への帰属度」等の側面から検討を行ったとあります。

どれぐらいの期間をかけて検討がなされたかについては、報告書の資料にある「「科学研究費補助金の在り方について」に係る研究費部会における審議経過」を見ると、平成16年1月23日から1年ほど時間をかけて審議されています。

1月23日 (第8回) 科学研究費補助金制度の改正に向けた審議事項及び審議スケジュールの確定、自由討議
2月19日 (第9回) ・応募資格の見直し
・不正使用の防止
・研究費全体の中における科研費の在り方
について審議
3月18日 (第10回) ・応募資格の見直し
・独立した配分機関体制の構築
・研究費全体の中における科研費の在り方
について審議
4月23日 (第11回) ・応募資格の見直し
・研究種目の構成の見直し
について審議
5月27日 (第12回) ・研究成果の発信の在り方
・中間まとめ(骨子案)
について審議
6月25日 (第13回) ・研究成果の発信の在り方
・中間まとめ(案)
について審議
9月30日 (第14回) ・研究種目の構成の見直し
(研究成果そのものの見直し)
・募集・審査の在り方の見直し
・研究費の配分の在り方
について審議
10月20日 (第15回) ・報告(骨子案)について審議
11月22日 (第16回) ・報告(案)について審議
12月10日 (第17回) ・報告(案)について審議

 

ところが、肝心の議事録を見ようと文部科学省のホームページのリンクをクリックしても、「404 エラー」が出てしまい参照できませんでした。
審議会情報(学術分科会)−文部科学省

というわけで、中途半端に終わってしまい申し訳ないのですが、【未完】ということでいったん記事を終えたいと思います。残念。