言葉にしてみる日記

日頃考えていることや感じたことを言語化するために書いているブログです。

国立大学法人における大学職員の能力開発(スタッフ・ディベロップメント:SD)について

近年、大学をめぐる環境の変化のもとで、大学改革を推進するために大学職員の能力開発(スタッフ・ディベロップメント:SD)が必要とされています。

 

masterpiece0924.hatenablog.com

職員の能力開発を話題にするときに気をつけるべきことは、「職員が育っているか」と「職員を育てているか」の峻別です。

 

「組織が育ててくれなくても、自分が勝手に育てばいい」というのは、個人にとっての能力開発のレベルで言えば、そのとおりです。

 

自分の価値を高めるために、社会的に評価される能力を身に付け、実績を積んでおく、又は、自分の資質・能力を高めることそれ自体に喜びを見出だす、というように個人にとっての能力開発には様々な理由・動機があるでしょう。

 

今回は、このような「個人が自分の資質・能力を高めようとすること」とは区別して、職員の能力開発を「組織が各個人又は特定の集団の資質・能力を高めることによって、組織全体のパフォーマンスを高めようとすること」と捉えて、組織的な取組に焦点を当てたいと考えています。

 

 

さて、大学職員の能力開発(スタッフ・ディベロップメント:SD)については、全ての大学等に、当該大学等の「教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、その職員に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修(スタッフ・ディベロップメント)の機会を設けること」を義務づける「大学設置基準等の一部を改正する省令」(平成28年文部科学省令第18号)が平成28年3月31日に公布され、平成29年4月1日から施行されることとなりました。

 

第1 改正の概要

1 大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)の一部改正
大学は,当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第25条の3に規定するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとすること。(第42条の3関係)

 

2 高等専門学校設置基準(昭和36年文部省令第23号)の一部改正
高等専門学校は,当該高等専門学校の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第17条の4に規定するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとすること。(第10条の2関係)

 

3 大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)の一部改正
(1)  大学院は,当該大学院の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第14条の3に規定するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとすること。(第43条関係)

(2)  その他所要の規定の整備を行うこと。(第10条第2項関係)

 

4 短期学設置基準(昭和50年文部省令第21号)の一部改正
短期大学は,当該短期大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第11条の3に規定するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとすること。(第35条の3関係)

 

 

第2 留意事項
1 専門職大学院の扱いについて
専門職大学院については,専門職大学院設置基準(平成15年文部科学省令第16号)第42条第1項の規定により大学院設置基準に係る規定が適用され,大学院と同様の扱いとなること。

 

2 対象となる職員について
「職員」には,事務職員のほか,教授等の教員や学長等の大学執行部,技術職員等も含まれること。

 

3 「機会を設けること」について
(1)  今回の改正は,個々の職員全てに対して一律に研修の機会を設けることを義務付ける趣旨ではなく,SDの具体的な対象や内容,形態等については,各大学等において,その特性や実態を踏まえ,各職員のキャリアパスも見据えつつ,計画的・組織的に判断されるべきこと。
(2)  SDの機会については,各大学等が自ら企画して設けるほか,関連団体等が実施する研修に職員が参加する機会を設けることなどが考えられること。

 

4 「その他必要な取組」について
SDを効果的・効率的に実施する観点から,各大学等において,その実情に応じ,例えば職員の研修の実施方針・計画を全学的に策定するなどの取組を行うことが期待されること。

 

 

第3 施行期日
本通知に係る省令については,平成29年4月1日から施行することとしたこと。

大学設置基準等の一部を改正する省令の公布について(通知):文部科学省

 

現在気になっているのが、各国立大学法人の人材育成担当部署において、「職員の能力開発」の義務化について、どのように対応していくかという議論がどの程度行われているのかということです。

 

義務化に当たっての論点については、 daigaku23 さんの記事が大変参考になります。

 

as-daigaku23.hateblo.jp

①今までのSD=職員を対象とした研修ではなく、教員も対象としてプログラムを検討する。

②学内でFDとSDを定義を行い、周知・理解を促すこと。(もしかすると、今回のSDで想定される内容が、今まではFDプログラムに取り入れられている可能性もある。)

③職員の研修ばかり充実しても、SDをやったという事にならない可能性がある(特に補助金申請関連で、大学運営業務に関する研修(SD)を全教職員にやったかと問われる可能性がある。)

 

個人的には、人材育成担当部署には、従来の「研修」を「スタッフ・ディベロップメント:SD」に名前を変えるというやっつけ仕事ではなく、大学職員の「能力」を「開発」するための組織づくり(人材育成基本方針の策定やジョブローテーションの明示、給与体系や人事考課を含む人事制度全般の設計)に真剣に取り組んでほしいと考えています。

 

先駆的な法人では、「人材育成に関する基本的な方針」や「求める職員像」を定めているところがあります。

 

■「愛媛大学の改革に向けての取組」(PDF)

https://www.ehime-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/03/business_20_torikumi.pdf

 

愛媛大学教育・学生支援機構 教育企画室 副室長・准教授 秦 敬治「人材育成ビジョンはなぜ必要か」

https://www.spod.ehime-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2015/02/%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%91%E3%80%90%EF%BC%B0%EF%BC%A4%EF%BC%A6%E3%80%9123.pdf

 

国立大学法人宇都宮大学「事務職員の当面の人材育成について」(PDF)

http://www.utsunomiya-u.ac.jp/reform/pdf/jinzai-ikusei_h22.pdf

 

また、国立大学法人山形大学では、ジョブローテーション制度を策定し、その実施規程を学内規則として定めています。

国立大学法人山形大学ジョブローテーション制度の実施規程

http://www.yamagata-u.ac.jp/reiki/new/act/frame/frame110000161.htm

 

国立大学法人東京大学国立大学法人京都大学国立大学法人大阪大学をはじめとしていくつかの法人では、全国の7つの地域で共通して行われる「国立大学法人等職員採用試験」とは異なる独自の採用試験を実施しています。

 

東京大学職員採用情報

http://www.u-tokyo.ac.jp/recruit/info/index_j.html


京都大学職員採用情報

http://www.saiyou.adm.kyoto-u.ac.jp/recruit/


■阪大を変える風になる ~Be a Wind of Change at OU~

http://www.osaka-u.ac.jp/sp/recruit2017/


残念ながら私の所属する国立大学法人では、「人材育成に関する基本的な方針」や「求める職員像」、「ジョブローテーションに関する方針」、「職員の独自採用」などは定められておらず、現時点で、今後もそれらを策定・実施する予定はないそうです。

 

 同じ国立大学法人と言っても、人員や予算の規模によって、置かれた状況は様々ではあるとは思いますが、人材育成担当部署によって取組に大きな差が出てしまうというのは、やはり大きな問題だと感じています。


大学職員の能力開発に関する公・私立大学を含めた各大学の取組については、科研費や外部資金を獲得するなどして、一度、詳しく調査を行ってみたいと考えています。